子どもの生活環境研究委員会 委員募集

委員長 石井昭夫(九州大学大学院芸術工学研究院 環境計画部門)
幹 事 都築和代(産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門)

設立の目的及び趣旨

 次代を担う子どもの心身共に健全な成育を図ることは、われわれ成人のもっとも重要な責務であることは言うまでもありませんが、そのためには子どもが日常的に身を置いている生活環境を、安全・健康・快適・学習などの諸点から総合的に充実・整備することが必要です。しかしながら、少子化が叫ばれ出してからかなりの年月が経っているのにもかかわらず、社会全般としては対応が十分ではなく、子どもの生活環境は豊かであるとは言い難いのが現状であると思います。その原因の一つとして、安全・健康・快適を目指した環境計画・設計の視点に立った子どもの特性に関する研究が少ない、あるいは体系的な集積がなされていないことが挙げられます。このことは、少子化の対極として取り上げられる高齢化社会に対応する研究が実に数多く行われ、施設充実など種々の施策が次々と実施されていることと比べると、雲泥の差が感じられます。
 小児科(医学)や児童心理学は対象を子どもに特定した分野としてかなり確立されていますが、必ずしも環境計画・設計を意識したものではありません。一方、人間―生活環境系学会をはじめとした環境関連学会の多くの会員が関与している生活環境に関する研究は、広く環境の物理的特性あるいは環境刺激―人体反応特性の面に着目して行われており、対象とするのは一般的な人間であり、対象を子どもに特定している研究はそれほど多くありません。もちろん、環境特性に関する一連の研究の中で、部分的にあるいは特例として子どもを対象とする場合はありますが、資料は一時的・断片的になりがちであり、一貫性・統一性がなかなか得られていないように思われます。
 2002年8月の文部科学大臣の公立学校への冷房導入方針発言をきっかけに各地で学校空調が検討・実施されている最近の動向を考えますと、今後は少子化に対する社会全般の認識が高まり、子どもの生活環境という視点からの環境計画・設計への取り組みが本格的に行われるようになるものと期待されます。このような背景から、子どものさまざまな環境的特性に関する基礎的資料の整備・充実を図ることは意義が高いものであり、焦眉の急を有することでもあります。
 上述のごとき観点から、子どもの生活環境に関する知見・情報の収集・整理、不足している情報・必要な情報の洗い出しとそれに対する補足を行い、子どもの生活環境計画・設計の基礎資料を提供し、望ましい子どもの生活環境の提案を試みることを目的として、「子どもの生活環境研究委員会」を設置いたしました。みなさんの研究活動と成果を豊かな子どもの環境づくりにつなげられるよう、温熱環境・空気環境などの分類にこだわることなく、幅広い分野からの多数の会員の積極的なご参加を期待いたします。

活動計画

 委員会活動の計画概要を以下に示します。文献検索による資料の収集・整理・検討(1〜5)が主な目的ですが、その過程における討論をふまえて委員個人あるいは任意的グループによる実験や調査の実施(6)に至ることも考えられます。最終的には研究成果として本学会和文誌「人間と生活環境」あるいは英文誌「Journal of the Human-Environment System」への掲載を予定していますが、単行本としての出版も視野に入れています(7)。実験・調査の実施により新たなデータの蓄積が得られれば、シンポジウム等の開催(8)も可能かと思われます。

  1.子どもの生活環境の形成要因に関する考察・意見交換
  2.各形成要因に必要な情報に関する考察・意見交換
  3.必要情報に関する文献調査によるデータ収集及び整理
  4.不足データの洗い出し及び意見交換
  5.不足データの補足に関する意見交換
  6.場合によっては不足データの補足への試み(実験・調査など)
  7.報告書作成(本学会誌掲載または出版)
  8.シンポジウムまたはパネルディスカッションの開催

1〜6はフィードバックを重ねて精錬してゆきます。

運営方針

 ○研究費の制約を考慮して、研究連絡・情報交換・討論は主に電子メールによる
 ○本学会シンポジウム・役員会開催時等を利用して委員会を行う
 ○活動期間は2年(2004年度及び2005年度)とする
 ○参加メンバーは、随時参加及び退会が可能。人間―生活環境系学会の会員に限る。

連絡先
  都築和代(つづきかずよ、産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門)
  E-mail:k.tsuzuki@aist.go.jp
  FAX:029-861-6621